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高い専門性が要求される「改修」というジャンル

建物の改修工事は、構造物の機能を回復させたり、時代ニーズやユーザーニーズに合った新たな価値を付加したり、といったジャンルです。きちんとメンテナンスしながら寿命を延ばしていくこと、建物を長く大切に使い続けることは、昨今の環境配慮の観点からも経済的な観点からもとても大切なことです。
その割に「改修」は、建設業界の中でも「新築」に比べて陽の当たりにくいジャンルです。工事金額が小さく市場的に旨味がないこと、誰かの作った建物の原状回復であり創造性が薄く感じられること-など理由はさまざまあるでしょう。
しかし、難易度で言えばかなり高度で専門性が高いジャンルと言えます。新築とは異なり、既存の建物の劣化状態を正確に把握し、その制約の中で最適な改修計画を立案しなければならないからです。新築時の図面が残っていない場合もあるのですが、そんな中で建物の用途や構造、周辺環境、予算、工期などの制約を消化しつつ改修計画を立案しなければなりません。施工を行う上でも、あらゆる建物の形状や構造の制約の中で、利用者が被る利用規制を時間的に、規模的に、環境的に、予算的に最小限に留めつつ進めなければならないのです。
そして改修は、医療行為と同じで、病状によって処置の方法は異なります。千差万別の状況に応じた的確な技術手法を選択しなければならないのです。
建物の長寿命化やストック活用が重視される中、改修工事の重要性はますます高まっています。高度な専門知識と技術を要するジャンルだからこそ、その価値がしっかりと見直され、そこに従事する設計士や施工会社にもスポットライトが当てられなくてはなりません。

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