巨額を投じて行うマンションの大規模修繕は、スムーズな合意形成を図る上でも、基本となる方向性、つまり「目的」を確認し、共有することが大切です。
では、大規模修繕工事の「目的」について考えてみましょう。なぜ大規模修繕工事を行うのか、その「目的」は大きく分けて4つに分類できるでしょう。
➀躯体機能の回復
築後10~12年くらいで実施するのが外壁の改修や屋上防水の改修になります。コンクリートの経年劣化(鉄筋の露出、ひび割れ、欠損、中性化)や防水材の劣化・破断などにより失われた躯体を回復させます。これは、すなわち建物の保護機能を回復させることです。もちろん、2回目の大規模修繕では
➁美観の回復
劣化現象(ひび割れ、白樺、さび汁、雨だれ、変褪色)で劣化した外観を、新しい外装材に更新することで、美しくよみがえらせます。
③財産価値の維持・向上
躯体の保護機能が失われ躯体本体が劣化していけば、建物の価値は下がってしまいます。皆さんの共有財産であるマンション、その財産価値を維持し、向上させることが目的の一つとなります。売却時、貸出などにおいても有利な条件を引き出すことができます。
④住環境の向上
時代の変化に伴い、生活様式も変化し、建物や設備の機能自体が陳腐化していきます。建物の防犯性、安全性、設備機能の観点から整備し、住みやすい建物へと性能の向上を図ります。建築基準法や消防法などの法令に適合した状態を維持することも重要になります。
なお、居住者の皆様の合意に基づき、さらに大規模な改修などを行って資産価値の向上を図ることはもちろん可能ですが、ここではあくまで修繕積立金を用いて行う大規模修繕工事の目的についてお話しさせていただいています。