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大規模修繕におけるエレベーター工事

2回目以降の大規模修繕工事では、設備関係の更新がメニューに加わります。その中で、意外と工事費が嵩むのがエレベーターですが、特に中層階、上層階の方々にとっては毎日の生活に直結するものですのですから、計画的に修繕メニューに加える必要があります。

エレベーターの更新などについて簡単に特徴を見ていきましょう。

まずは、エレベーターの種類についてご紹介しますと、大別してロープ式エレベーター、油圧式エレベーターの2種類に分かれますが、低層の一部のマンションを除いてはほとんどがロープ式エレベーターを採用していると思われます。

エレベーターの種類

ロープ式エレベーターは、ワイヤーロープでかご(ボックス)を釣った形のもので、トラクション式(つるべ式)とドラム式(巻胴式)に分類されます。ロープの一端に釣合い重りを設置、逆の端に私たちが載っているカゴを吊り巻上機で昇降させる仕組みですトラクション式が主流であり、ワイヤーロープをドラムに巻きつけて昇降させるドラム式の採用は、低層階の一部のマンションに止まっているようです。

経年劣化が見られるエレベーターの主要部位は、巻き上げ機、制御盤、ロープ、ドア機構などです。完全自主管理のマンションでなければ、平素からのエレベーターの保守・点検業務はマンション管理会社を通じて行っているケースが多いと思いますが、更新時期などについては管理組合もしっかり状況把握に努めたいものです。

耐用年数

エレベーターの耐用年数は種類を問わず17年とされていますが、これは法的耐用年数であり、実際には20~25年、計画的に部品交換などを行って来ていれば30年でも大丈夫かも知れません。ただ、メーカーによって異なりますが、20年過ぎると製造しておらず交換部品が入手できなくなる可能性もあるようです。

リニューアルの手法と特徴、工期・金額

大規模修繕時には、調査・点検を行って、➀全撤去・全面更新➁準撤去③部分的な修繕・改修―のいずれかの対応を選択することになります。特徴を見てみます。

➀エレベーター全体を新しいものに入れ替えるわけです。経年劣化の程度によって、また、古いもので部品供給が得られない、省エネ、高速化、バリアフリー対応などの性能劣化が著しい-などのケースで、費用は高額になっても長期的視点に立って選択することも有益です。

工期は1カ月以上、規模や階層によっても異なりますが1200万円~1500万円(1機あたり)は必要になります。

➁準撤去―かご(ボックス)、敷居、ガイドレールなど再利用可能な部分を残し、制御盤や巻き上げ機、ロープなどの主要な駆動部分・制御部分を交換する方法です。工期は20日くらい、①に同じく規模や階層によっても異なりますが700万円~1000万円程度(1機あたり)と見込まれます。

③部分的な修繕・改修―劣化の状況から、軽微な部品交換や調整で対応可能なケースで、制御盤の一部交換、ドア機構の調整、内装更新などのみを行います。1週間から半月くらいで対応可能で、費用も500万円~700万円(1機あたり)に抑えられます。

工事の事前計画と停止期間中の管理組合の対応

さて、工事になると、2台以上ある場合は、時間をずらして順番に整備すればいいし、部品交換程度なら利用しない時間帯を選ぶこともできますが、1台しかない場合には工事期間中はずっと、階段利用を余儀なくされます。

ですから、工事期間、停止期間の計画や居住者への事前告知はしっかりと行う必要があります。また、計画段階では、高齢者や身体の不自由な方への配慮(荷物運搬やごみ出しなど、買い物代行などの支援協力体制)は管理組合でしっかりと話し合っておくことが大切です。

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