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コンクリート建築物の寿命

コンクリート建築物の寿命

コンクリート建築物の寿命に関する話題がよく上がります。そして、皆さん、よく「50年」との認識をお持ちです。不動産の減価償却計算に用いられる法定耐用年数が基準になっていると思われます。例えば、鉄筋コンクリート建築物の法定耐用年数を見ますと、用途によって多少の違いがあり、事務所ビル50年、マンション・宿舎など47年、病院39年、飲食店用建物34年などとなっています。

けれど、これは躯体構造物の寿命とは異なります。躯体自体は、その倍の100年でも耐えられると言われています。しかも、きちんと定期的にメンテナンスをした場合は、という条件付きです。

建物寿命は、メンテナンスしだいというのが正解と言えます。しかも、建物の耐用年数とは無関係に、劣化による見た目の美醜の印象や、機能の陳腐化、時代の用途ニーズに合わない構造的制約などの要因によって、利用したいというニーズが伴わなければ、さらに寿命を縮めてしまうことになります。

まずは、計画的なメンテナンスによって建物の機能を維持していくことが大切になります。

長期修繕計画

貴方の所有する建物は「長期修繕計画」をお持ちですか?

建物の機能を維持していくために必要になってくる修繕メニューとその時期、更新にかかる費用を予測、算出するものです。

分譲マンションなどでは、来るべき修繕に向けて計画的な積み立てが求められるため、必ず長期修繕計画を策定しています。法人がオーナーの場合には、収支計算や投資計画などに必要なため、大まかな計画はお持ちだと思います。

国土交通省では以前から、分譲マンションの管理に関する指導に注力しており、長期修繕計画のガイドラインを提示しています。ビルやその他の建物も、修繕計画を作るうえではこのガイドラインが参考になります。2024年6月には、「長期修繕計画作成ガイドライン・修繕積立金ガイドラインの改定」を公表していますので、ご確認ください。

もっとも長期修繕計画は、建物の調査・診断を行った後に、その結果を踏まえて作成するものですから、改修工事に精通した設計コンサルタントや施工会社に依頼する必要があります。

しかも、賃貸マンションや賃貸ビルなどは、賃料にも影響するため、外観や機能などもテナントにアピールしなければならないでしょうから、グレードアップという部分も含めた修繕計画を立てておく必要があります。

加えて、1981年(昭和56年)5月31日までの建築確認においては旧耐震基準が適用されていますので、それ以前の建物は補強など耐震対策の必要性も生じます。これらも含めて、専門家に相談した方がよいでしょう。

また、長期修繕計画は、建築材料などの標準的な耐久度で更新時期を割り出し、その時の建築材料の価格で必要経費を試算します。したがって、一度作成した修繕計画がいつまでも正確だとは言えません。建築材料の耐久性は、用途や使用環境、気象環境などにも左右されますから、定期的な見直しも必要になります。

施工の難易度

大規模修繕、改修工事などの施工の難易度はどうでしょう。

当協会では、人が住まったままで、居住者の安全と、暮らし環境を守りながらの施工を余儀なくされるため、分譲マンションが最も高いハードルと位置づけています。けれど、賃貸ビルや賃貸ビル、病院・学校福祉施設、学校なども、それが民間の建物であれば賃貸収入にも関係してくるため、住まいながらの工事、使いながらの工事となり、分譲マンション同様に高度な施工能力が要求されます。

したがって、改修工事に長けた専門工事会社を選択することが必要になります。いきなり調査段階から施工会社に委託してしまう、設計コンサルタントに調査・診断、設計を依頼して、施工者の選定作業のアドバイスももらうなど、さまざまな手法があります。

決まった施工会社がないのであれば、まずは設計事務所に必要金額を割り出してもらった後に、施工会社の選定方法についてもアドバイスを求め、数社から取り寄せた会社概要、経営状況、施工実績などの資料と合わせて見積もり書を比較するのがよいでしょう。

この時、本社または支店、営業所など、静岡に確かな拠点を設けている会社を優先しましょう。地元の企業は、そこで営業していますので、アフターメンテナンスなどをお願いするのも楽なのです。

 

「新築」と「改修」

 

建物の長寿命化対応の大切さが叫ばれるようになった今でも、建築市場の中心は「新築」です。建物の新築工事に携わっているような大きな設計事務所や建設会社は、専門性の高い改修工事を得意としていないケース、生産性が薄いと切り捨てているケースも多いのです。

大規模修繕、改修に携わる設計コンサルタントは、図面も残っていないような建物であっても、現在の劣化箇所を的確に把握、対策を練って事業計画を立案し、設計作業では具体的な図面も書き起こします。「新築」の設計コンサルタントと「改修」の設計コンサルタントは職能が異なるといっても過言でないほどの違いがあります。

工事に関しても、すでに美案内の通り非常に専門性の高いジャンルになりますので、しっかりと実績などを確認した上で専門業者に依頼することをお勧めします。

 

当協会、SRTAの紹介

 

当協会は、静岡県に拠点を置く、改修のプロフェッショナルが集い、さらなる技術研鑽を積みながら、県内にはまだまだ少ない改修のスペシャリストの育成を目指しています。2020年に活動を開始した静岡県マンション・ビル改修技術勉強会を前身俊とし、2024年4月に発足しました。

当協会は、非営利法人であり、設計コンサルタントや工事会社の斡旋を行うものではありません。皆様方のご相談に耳を傾け、協会内企業の紹介はさせていただきますが、他頁などにも記載しております通り、紹介料などをいただくものではございません。

お困りのことがあれば、また、設計コンサルタントや専門の施工会社をお探しであればお気軽にご連絡ください。

 

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