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マンション大規模修繕って何やるの? 詳細な工事の流れと内容

マンション大規模修繕って、いったいどんな内容の工事を行うのだろう? 一度も大規模修繕を経験してない皆さんは、工事の詳細な流れや工程なんてなかなか想像も付かないのではないでしょうか。

1回目の大規模修繕は築後12~15年目に行う外壁や屋上防水が中心となります。そして概ね同じ周期で2回目、3回目に同様の外壁、屋上防水改修を行っていくのですが、それに加えて2回目からは設備関係の更新なども入ってきます。この他、機能面の劣化などに対しては、必要に応じてその都度対応していかなければなりません。

では、大規模修繕の主役である外壁や屋上防水を中心とした工事内容の詳細はどのようなものなのか、どういう手順で進んでいくのか、簡単に流れを解説していきましょう。ちなみに、設備関係工事や付帯工事は、最後に「その他工事」としてまとめておきます。

➀共通仮設工事

工事を進める上で必要な作業環境を整備するものです。現場事務所、積業員の詰所、仮設倉庫、仮設トイレ、洗い場、資材置き場などを整えます。マンションエントランスには工事用の連絡掲示板を据え、必要に応じて防音シートなど近隣に配慮した対策も行います。見積もりなどで、共通仮設費といった場合には、排水処理や発生材の処分、必要に応じて行う官庁への届け出業務などの費用もこれに含まれます。

 

➁直接仮設工事

仮設足場や建物の養生(建物の防護)、清掃作業などを行います。足場工事は「枠組み足場」が最も多く用いられてきていますが、低層棟などでは「クサビ式緊結足場」が用いられこともありますし、他にもクサビ式緊結足場を改良した次世代足場も増えています。高層マンションや、足場が組みにくい場所では、上から吊るすタイプのゴンドラ工法や移動昇降式足場も活躍します。

 

③下地補修工事

経年劣化により、コンクリート躯体、つまり壁や天井などには亀裂やひび割れ、傷、欠損が入りますし、モルタルの浮き、鉄筋の爆裂などが生じます。塗装、防水を行う前の下準備としてこれらをしっかりと補修しておく必要があり、最も重要な工程です。

建物の劣化を食い止め、雨水の侵入などを断つための大切な工程であり、シール工法、Uカットシール工法、エポキシ樹脂低圧注入、モルタル補修などがあります。

 

タイル補修工事

タイル貼りのマンションでは、経年劣化でタイルが下地から浮いてきたり、ひび割れたりということが起こります。タイルが剥離して落下して通行人を直撃したケースも多数あり、この場合管理組合が責任を問われることになります。それ以前にタイルのひび割れを放置すれば躯体の劣化を早めますし、美観の問題もありますからしっかり修繕を行う必要があります。タイルの浮きは、目視だけでなく、打診調査によって対象箇所を洗い出します。

 

➄シーリング工事

サッシとフレームの間にゴム状のものが付いていますが、これがシーリングです。サイディングボードやALCパネルなどの外壁のつなぎ目(目地)にも充填されています。雨水やほこりの侵入を防ぐ上でとても大切な役割を担っているのですが、年数を経るとしだいに硬化し縮んでいきます。肉痩せという現象です。シーリング材を新しくすることで防水性や気密性が高まり、躯体の劣化を防ぎます。古いシーリングを除去して新たに充填することを打ち換え、古いシーリングを残しその上から充填するのを増し打ちと言います。また、「コーキング」は「シーリング」とほぼ同意です。

 

➅塗装工事(外壁)

ここまでの下準備を終えて、ようやく塗装に移ります。塗装ももちろんですが、美観の回復、防水機能の回復を目的としたものです。最も一般的なシリコン塗装やほこりが付きにくく紫外線にも強いフッ素塗装、今は主流ではなくなりましたがアクリル塗装やウレタン塗装などの種類があり、それぞれ価格や耐用年数などが異なります。下地と塗料の付着力が大切になるため、劣化状況を踏まえて付着力が落ちていれば上塗りせず、古い塗装を剥がして新たに塗装を施します。塗装は、下塗り・中塗り・上塗りの3回塗りが基本です。

 

➆塗装工事(鉄部)

大規模修繕では、扉や外部階段、手すりなどの鉄部についても塗装を施します。年数を重ねると錆が発生し、鉄の腐食を早めます。これを防ぐために行うのが鉄部塗装です。サンドペーパーやワイヤーブラシなどを使ってしっかりと錆びを落とした上で、塗装を重ねます。ただ、最近では、錆の上からそのまま塗るだけで錆の進行を止めて強度を増すような新しい塗装も出現しています。

 

➇防水工事

防水工事は、大規模修繕における最も重要な工程です。防水層は建物のバリアであり、雨水の侵入や汚れから建物を守るものです。経年劣化によって損傷した防水層を回復させる工事で、屋上やバルコニー、廊下、階段などが対象となります。防水工事にも種類があります。ウレタン防水は、塗膜防水材の一種で耐久性が高く最もよく用いられています。シート防水は防水シートを重ねる工法で、防水性能が高く価格も安価なため、こちらもよく用いられます。アスファルト防水は、加熱したアスファルトを塗布するもので、費用は安価に抑えられますが、均一に塗布しなければならず施工難度は高い工法になります。FRP防水とは、ガラス繊維を樹脂でコーティングした素材(ガラス繊維強化プラスチック=FRP)のことで、軽量なため施工の重量負担が少なく、工期も短縮できますが、費用は割高になります。

 

 

➈その他工事

付帯工事として出てくるのがエントランス改修や玄関扉やサッシ交換などがあります。宅配ボックスの設置であったり、オートドアロックシステムの追加であったり、時代と共に陳腐化した機能をグレードアップさせることも資産価値を維持することにつながります。防犯、防災、環境対応などの対応もこれに含まれます。

そして、2回目の大規模修繕からは設備工事が入ってきます。給排水管の更新・更生工事やエレベーター更新、照明工事(LED化)、ガス設備、消防設備工事や通信関連、さらには機械式駐車場などの設備工事も加わってきます。

 

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