マンションやビルの大規模修繕において、施工者の公募条件が厳しすぎる事例をよく見かけます。ビル工事では公募よりも相見積もりが一般的ですが、マンション工事では公募方式が広く採用されていますので、ここでは「マンションの大規模修繕」に絞ってお話ししますが、その他ビルなどの建物オーナー様にもぜひ参考にしていただければと思います。
施工会社を公募すること自体は、条件を明示して公平性を保ち、適正なコストと品質を備えた業者を選ぶための有効な手法です。
しかし、公募要項を作成する際
、失敗のリスクを恐れるあまり「資本金」「施工実績」「役所の建築評点(経営事項審査の評点など)」といった条件を厳しく設定しすぎてしまうケースが目立ちます。
条件が高すぎると、特定の超大手しか応募できず、結果として工事費が高騰してしまう事態を招きかねません。
たとえば、部屋にちょっとした荷物棚を設置したいとしましょう。工作が苦手なあなたが、誰かに謝礼を払って棚を組み立ててもらうとします。このとき、国から表彰されるような「現代の名工」を探すでしょうか。それとも近所の家具職人さん、あるいは手先の器用な友人に頼むでしょうか。
もちろん、マンションと荷物棚では規模が違います。しかし、「必要な作業に対して、過剰な技術や肩書を求めればコストが上がる」という本質は同じです。どの程度の費用がかかるかを知るために、まずはその作業ができる技術を持った数社(数人)に見積もりを出してもらい、比較したいと考えるのが普通ではないでしょうか。
必要以上に高い能力や会社の規模を求めることは、本来なら丁寧で適正価格な工事を提供してくれる良質な施工会社を、最初から排除してしまうことになりかねないのです。
具体例を挙げてみましょう。
「戸数40戸・3階建て、予算6,000万〜8,000万円程度」のマンションで施工者を公募する場合を考えます。この規模にもかかわらず、次のような過剰な条件が提示されているのをよく目にします。
【過剰な公募条件の例】
・資本金1億円以上
・過去3年で同規模の実績20件以上
・経営事項審査のP評点900点以上
・特定建設業許可を有し、所属する一級施工管理技士10人以上
そんなに厳しい条件が必要?
この規模であれば、感覚的には「資本金2,000万円以上」「過去5年で同規模の実績5件以上」「経審の制限は設けず、施工管理技士を配置」といった条件でも十分ではないでしょうか。
資本金1億円以上とすると、静岡県内の改修専門会社の多くは応募すらできません。また、経営事項審査(経審)は主に公共工事の入札等で用いられる指標であり、分譲マンションの修繕能力と直結するものではありません(中には「県の建築Aランク」といった、分譲マンション修繕にはそぐわない条件を見かけることもあります)。
大規模修繕工事のアフターフォローを考えれば、県内の地元企業、あるいは県内に拠点を構えている企業を選ぶ方が望ましいはずです(当協会が施工会社等の入会条件として県内に本店・支店・営業所を求めているのもそのためです)。財務状況の健全性を確認することは不可欠ですが、それは資本金という「会社の規模」だけで測れるものではありません。
有資格者の数についても同様です。どれだけ優秀な技術者を多く抱えていても、実際に自社の現場
を担当してくれなければ意味がないのです。
こうした過剰な条件を設定することで、地元・県内の優良企業が応募できなくなってしまいます。その結果、数社の大手企業しか残らず、競争性が失われてしまうのです。
もちろん、大手企業だから必ず見積もりが高くなるとは限りませんし、仮に高くとも差額を考えて技術力を優先するという判断もあって然るべきです。
コンサルタントに任せきりはダメ
「そうは言っても、うちはコンサルタント会社にお任せしてあるから大丈夫」と思われるかもしれません。しかし、コンサルタント会社が入っているケースでこそ、過剰な条件が設定されることがよくあります。施工トラブルを避けたいコンサルタント側としては、自社がよく知っていて安心できる特定の会社に受注させたいという心理が働くためです。
コンサルタント会社に任せきりにするのではなく、「競争性が失われるリスク」と「施工上のリスク」のバランスを考え、一緒に条件設定を吟味するくらいの主体性が、管理組合の皆さんに求められているのです。条件の設定は、ご自身のマンションの規模や施工範囲、施工条件などを勘案して考えましょう。(※関連記事「施工規模によって施工の難易度は異なる」もご参照ください)










