マンションやビルなどの大規模修繕を行う際、そ
の難易度を「すべて同じ」として扱うべきではありません。
建物の規模は大きく「低層」「中層」「高層」に分けられます。厳密な定義はありませんが、マンションの場合、おおむね1〜3階建てを「低層」、4〜10階建てを「中層」、11階建て以上を「高層」、20階建て以上を「超高層」と捉えるのが一般的です。(オフィスビルの場合は、3階建て程度までが低層、8階建て程度までが中層、17〜18階建て程度までが高層、それ以上を超高層と考えることが多いでしょう。)
修繕の難易度を測る際、この階数区分だけで一概には言えませんが、一つの大きな目安になります。また、高さだけでなく「戸数(部屋数)」によっても難易度は変わります。高さや建物規模によって、施工法も工程管理の煩雑さも全く異なってくるためです。
中層階以上のマンションは要注意
規模が大きくなるほど、単なる外壁塗装や防水工事にとどまらず、高度な施工管理・リスク管理、そして住民間の「コミュニティマネジメント」が強く求められるようになります。
したがって、中層階以上・50〜60戸以上のマンションでは、委託する設計コンサルタントや施工会社に高度な技術力と豊富な実績が求められます。実力や実績のない会社を選んでしまうと、予算オーバーや工期遅延、施工不良だけでなく、事故や住民トラブルといったリスクが飛躍的に高まってしまうのです。
では、建物の規模によって具体的にどのような違いがあるのでしょうか。
- 技術面・施工面の違い
低層棟であれば、地上から組み上げる標準的な「枠組み足場」を使用し、風の影響も少なく、数ヶ月程度の工期で安全に施工できます。
しかし、高さや戸数が増すと事情が一変します。
中層棟では枠組み足場も使われますが、高層棟や大型団地になると移動式の「ゴンドラ足場」が必要となり、超高層棟では専用の特殊足場が必要になります。広大な敷地の団地であれば、複数棟へ同時に足場を仮設する計画も欠かせません。
高層になるほど強風への耐性計算が必要となり、ゴンドラ足場の操作には熟練の技術と経験が求められます。また、運び込む資材量も膨大になるため、敷地内の動線を確保し、居住者やテナントの負担にならない緻密な仮設計画が必要です。
塗装や防水の工程でも、高層階では強風による作業中断が頻繁に起こり得ます。塗料やシートの飛散防止への徹
底した配慮はもちろん、紫外線に強い耐久塗料の選定も必要です。さらに高層・超高層建築では、制震・免震構造が採用されているため、地震時の揺れに対応する「免震ゴム」や「エキスパンションジョイント(外壁の可動接合部)」といった特殊部材の補修ノウハウも不可欠となります。
- 工程・リスク管理・住民対応の違い
大規模なマンションやビルでは、工期が1年〜2年に及ぶことも珍しくありません。複数の工区で同時に工事を進めるケースも増え、工事遅延リスクが高まるため、しっかりとしたリスク分散計画が必要です。
特にマンションの場合、工事中の防犯対策(センサー、監視カメラ、ICカードによる入退館管理)、プライバシー保護、工事車両と住民との動線分離など、配慮すべき事項が多岐にわたります。
施工期間中は、掲示板やWebサイトを活用したタイムリーな進捗報告に加え、対面での問合せやクレームにも誠意をもって対応することが求められます。こうしたノウハウや経験が乏しい会社に頼むと、施工会社との関係悪化だけでなく、住民同士のトラブルにまで発展するリスクが高まります。
建物の規模が大きければ大きいほど、設計コンサルタントや施工会社を選ぶ際に「費用の安さ」ではなく「同規模マンションでの実績」を最優先にすべき理由はここにあります。20階建て以上のタワーマンションなどは言うまでもありません。
しかし一方で、**「建物規模が小さいにもかかわらず、施工会社の応募条件を不必要に厳しく設定しすぎてしまう」**という逆の問題も数多く発生しています。
(※小規模・中規模マンションで条件を厳しくしすぎることの弊害については、ぜひ関連記事「厳しすぎる公募条件の設定は競争性を損なう」もあわせてご覧ください。)










