大規模修繕工事は、皆さんが蓄えた修繕積み立て金を投入して行う一大事業ですが、一体どの程度の額が必要になるのでしょうか。この点が非常に難しいのが改修工事や修繕工事。もちろん、マンションの規模によって違いますし、調査診断を行って劣化状況を確認しなければ正確な費用は分かりません。何をどの程度まで直すのかという工事の内容によって変わってきます。
その点をご理解いただいた上で、一般的に言えば、1戸あたり100万円~200万円程度というのが目安になるでしょうか。
あまり細かく予算目安をお話ししても意味はないのですが、国土交通省が行った「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」では、1戸あたり100~125万円の割合が最も高く、次いで戸あたり75~100万円/戸、戸あたり125 ~150万円―となっています。
費用の内訳は、どんなものなのでしょうか。主に以下のような項目となってきます。
- 仮設工事費―足場設置や養生など、工事を行うための準備費用
- 躯体工事費―外壁補修、屋上防水、鉄部塗装など、建物の主要部分の修繕費用
- 設備工事費―給排水管更新、電気設備改修、エレベーター改修など、設備の修理・交換費用
- その他工事費―共用部分の修繕、植栽の剪定、照明器具の交換など
- 設計・監理費―設計事務所やコンサルタントへの依頼費用
- 諸経費―事務費、保険料、税金など
「安いに越したことはない」。当たり前のことですが、「安かろう悪かろう」という言葉もあります。例えば応急処置的な修繕を行えば、次回の対応時期が早まりますし、金をケチって陳腐な修繕内容で済ませれば建物本体は長持ちしません。そもそも建物を長持ちさせ、皆様のマンションの資産価値を守るために行う大規模修繕です。いくら安くても「目的」が達成されなければ意味がありませんね。
したがって、調査診断を依頼し、専門家の意見には素直に耳を傾けることも大切です。何事もそうですが、皆さんが価格の話ばかりを優先させれば、施工会社も受注するために廉価なレベルの低い提案をしてくるものです。それでは意味がありません。