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コンクリート建物の躯体劣化―外壁

コンクリート建物の劣化具合を知る上で、一番分かりやすいのは外壁回りでしょうか。屋上などは滅多に上がることはないかも知れませんが、外壁は普段から目にする機会も多いことでしょう。経年と共に、建物からは色々なサインを読み取れます。簡単に躯体劣化のうち外壁に現れるサインに着目してみます。

 クラック・ひび割れ

まず「クラック」、つまりひび割れですが、経年と共に大なり小なり、ほぼ例外なく出現します。

原因はいくつか考えられます。打設されたコンクリートは、経年と共にしだいに水分が蒸発して乾燥し、収縮します。季節によって気温も変化するので、膨張と収縮を繰り返し、そのためクラック、つまりひび割れが生じます。寒冷地などではコンクリート内の水分が蒸発しない代わりに、水分の凍結と溶解によってクラックを発生させてしまいます。

また、施工不良によるケースも珍しくありません。新築時のコンクリート打設では、段階的に複数層に分けて打設することがあり、この層と層の隙間に空気や不純物が入り込むことで、接着しきれない継ぎ目が生じるケースがあり、これを「コールドジョイント」と呼びます。

そして、クラックやコールドジョイントは、内部に雨水を迎え入れてしまいます。すると、コンクリートの炭酸化反応によってアルカリ成分がしだいに抜け、中性化していきます。これが「コンクリートの中性化」と言われる状態です。

 エフロレッセンス

コンクリートが中性化していく過程では、コンクリート中に遊離石灰(酸化カルシウム)が蓄積するか、水分と反応して水酸化カルシウムとなって表面に露出、「エフロレッセンス(俗にいうエフロ)」という状態を引き起こします。白華現象とも呼びます。白い粉を吹いたようなものや、変色して色むらが現れたもの、綿状に膨らんだものなどもあります。

 チョーキング

エフロレッセンスとよく似たものとして「チョーキング(白亜化)」という現象があります。これは、コンクリート成分ではなく、塗料の中に含まれる顔料成分が分離して露出するものです。経年と共に、雨や紫外線による塗装の劣化は避けられません。塗装が劣化すると、顔料成分は粉状になって白く表面に浮き出します。指で拭ってみると、指先には白い粉が付着します。から、素人でも分かります。外壁塗装の防水機能が損なわれた証拠ですから、外壁の塗装改修が必要になります。

 錆と爆裂

コンクリートの躯体内部の鉄筋や鉄骨は、アルカリ成分によって錆び(腐食)から守られていますが、中性化が進むと、鉄筋や鉄骨は露出して、錆(サビ)は進行します。建物の強度や寿命は、直接的にはこの骨組みの腐食が引き金となって劣化が進行するのです。

錆が膨張していくと押されたコンクリートが爆裂したり、剥離したりといった現象を引き起こします。だからこそ、この中性化を防ぐためにコンクリートの上を塗装して塗膜で守る作業が必要になるのです。

 タイルの浮き

表層をタイル貼りとしたマンションがあります。見た目の美しさだけでなく、耐火、耐水性にも優れていて、確かに劣化防止には一役買ってくれますが、タイルを貼ったマンションでは接着剤が劣化したり、コンクリート本体の爆裂などにより背面に空洞ができたりして、タイルが浮いた状態になります。こうなると、剥離して落下するリスクもありますから危険です。タイルの目地にあるクラックや、タイル壁が膨らんでいるように見えたりする「浮き」などで劣化の具合を判断できます。

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